小児の感染症とは

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ウイルス・細菌・寄生虫といった病原体が体内に侵入することで、様々な病気を発症している状態を感染症と言います。感染経路としては、咳やくしゃみを通じて感染する飛沫感染、空気感染というのがあります。またドアノブや使い回しのタオルなどについている病原体に触れ、それが口や鼻に入り込むことで感染する接触感染や、感染者の血液が傷口などから入り込んで感染する血液感染などがあります。
これら病原体が体内で増え始めると、発熱・咳嗽・鼻汁・嘔吐・下痢・倦怠感などの症状が現れるようになります。これが感染症の発症メカニズムです。小児によくみられる感染症には、以下のような病気があります。

インフルエンザ

インフルエンザとは

インフルエンザウイルスに感染し、発症する呼吸器感染症です。飛沫感染や接触感染によって感染するとされ、1~2日程度の潜伏期間を経て発症します。冬から春の季節(12月~3月)にかけて流行します。主な症状ですが、全身症状として、38℃以上の発熱・頭痛・悪寒・関節痛・全身の倦怠感などがみられます。また呼吸器症状としては、鼻水・咳・喉の痛みなどがみられます。乳幼児の場合、腹痛・下痢・嘔吐等の消化器症状が出ることもあります。注意しなくてはいけないのが合併症です。こどもでは、中耳炎、肺炎などを併発することがあります。またごく稀にインフルエンザ脳症を発症することもあります。この場合、発熱後にけいれんや意識障害がみられるようになります。その後、脳にむくみが現れるなどして生命に影響することもあります。

治療について

自然に治癒していく疾患なので多くは安静にしています。また対症療法として解熱鎮痛薬を使うこともあります。このほか、発症して48時間以内であれば、抗インフルエンザウイルス薬(オセルタミビル等のノイラミニダーゼ阻害薬)を使用することもあります。

感染性胃腸炎

感染性胃腸炎とは

ウイルスや細菌といった病原体に感染し、嘔吐や下痢などの消化器症状や発熱が起きている状態を総称して感染性胃腸炎と言います。汚染された食べ物や水・氷等を摂取する、感染者の吐物や便に触れるなどして感染します。なお小児が発症する感染性胃腸炎は、ウイルス性のものが多く、なかでもロタウイルスやノロウイルスによる感染が多いです。また細菌が原因の胃腸炎としては、カンピロバクター、サルモネラ、病原性大腸菌などがあります。それぞれの特徴ですが、ウイルス性胃腸炎は冬から春にかけて発症しやすく、水のような下痢便が出てくることが多いです。また細菌性の場合は、夏の時期に発症することが多く、腹痛の症状が強く出るほか、血便をきたすことも少なくないです。

治療について

感染性胃腸炎に特効薬はありません。この場合、対症療法が中心になります。具体的には、無理に下痢は止めない(下痢止め、吐き止め等の使用は推奨しない)、ただ脱水症状にならないように経口補水液を摂るようにします。なお細菌性胃腸炎で重度な症状を呈している場合には、抗菌薬を使用することもあります。

RSウイルス感染症

RSウイルス感染症とは

RSウイルスへの感染でおこる、呼吸器の感染症のひとつです。飛沫感染や接触感染によって感染し、2~8日の潜伏期間で発症します。RSウイルスの感染力は非常に強く、2歳頃までにほぼ全てのこどもがかかり、その後も感染を繰り返します。
RSウイルスは、鼻水や咳、発熱といったいわゆる風邪の症状が出ます。軽症であれば1週間ほどで治ります。ただし、重症化すると細気管支炎や肺炎を起こし、呼吸が苦しくなり、呼吸の際に「ヒューヒュー」「ゼイゼイ」という音がしたりします。低月齢のこどもは呼吸を止めることがあったり、人工呼吸器を使用することがあります。新生児、生後6か月未満の乳児、低出生体重児、心臓や肺に基礎疾患のある方は重症化しやすいので注意が必要です。

治療について

RSウイルスに特効薬はありません。症状に合わせて対症療法を行うのが基本となり、水分補給・栄養・睡眠が重要となります。重症化しやすいこどもや呼吸の苦しそうなこどもは入院での経過観察が望ましいことも多いです。

溶連菌感染症

溶連菌感染症とは

溶連菌とは、正式には溶血性連鎖球菌と呼ばれる細菌で、飛沫感染や接触感染により主にのどに感染します。咽頭炎や扁桃炎、それに小さく紅い発疹を伴う場合があります。溶連菌には、A群・B群・C群・G群など複数の種類がありますが、症状を引き起こす場合のほとんどはA群が原因となっています。2~5日の潜伏期間で発症します。
主な症状としては、発熱・喉の痛み・扁桃腺の腫れ・嘔吐・頭痛などが見られます。ただし、3歳未満のこどもでは、あまり熱が上がらず、体や手足に小さくて紅い発疹が出たり、舌にイチゴのようなブツブツができたりします(イチゴ舌)。
溶連菌感染症では、リウマチ熱・急性糸球体腎炎・結節性紅斑などの合併症に注意が必要です。溶連菌感染症は、症状が消えても体内にはまだ菌が残っており、これらの合併症を引き起こすことがあります。

治療について

治療には抗菌薬を使用します。溶連菌感染症は、一旦症状がなくなっても5~10日は体内に菌が残っている場合がありますので、重症化や合併症を防ぐためにも、処方された抗菌薬は最後まで服用してください。リウマチ熱は適切な治療で予防可能ですが、急性糸球体腎炎はどのこどもにも起こる可能性があります。尿の色が濃かったり、まぶたあたりが腫れぼったいようなら、病院を受診してください。